どうも、ヨウ-Pです!
いろんな切り口からカイゴのヒントをお届けしています!
今回の記事は、小学生の息子の授業参観で考えていたことを少し。
その日は人権学習でした。
人権学習で使われたのは金子みすゞさんの「私と小鳥と鈴と」でした。
この詩の中で使われるフレーズ「みんなちがって、みんないい」はとっても有名です。
この言葉は、いろんな利用者さんと関わる介護の仕事においても心に響くフレーズであり、いろんな職員さんを育てていく立場としても心に響くフレーズです。
この「みんなちがって、みんないい」から考えた介護現場の人材育成のことを記事にしました。
「みんなちがって、みんないい」のか?
「みんなちがって、みんないい」
誰もが一度は耳にしたことのある言葉だと思います。
歌にもなっていますね♪
これだけ受け入れられているのは、今の時代を象徴している言葉だからだと思います。
今の時代は「個」の時代と言われていて、「個性」を大切にする教育へと変わってきています。
そして、そうした思想は大人の世界でも浸透し始めていて、組織における人材育成においても「個」の尊重はとても重要視されています。
とてもいいことなんですが、組織のなかで働いているとこの言葉に違和感を感じることがあります。
私のなかでは、組織のなかでの「個」の尊重については限界があると感じているからです。
子の「教育」としては大事な思想
「みんなちがって、みんないい」は、子の「教育」としては大事なことだと思っています。
やはり親としては、子どもが伸び伸びと自分らしく成長してくれることが願いますし、子どもが友達同士で「ちがい」を認めあえる関係をつくってほしいからです。
子どもは好きなことに取り組んでいるときのほうが生き生きしています!
好きなことはどんどん上手になります!
ある利用者さんからはこんな助言をもらいました。
子どものうちは自由にさせてやったほうがいい!
子どものうちに我慢させすぎたら大人になってから大変なことになるで~!
確かにその通りだと思います。
子どものうちは、自由に伸び伸び自分らしくしているほうがいい!
ただ、そう思う一方で、「大人になってから困らないかな…」という心配があるんですよね…。
「個」を尊重できない社会の現実
私の子は、息子も娘もとても個性的なんです!
だから、ちょっと心配してしまうんですよね・・・。
大人になってからのことを・・・。
個性的というのは、「良くも悪くも」の部分があります。
よく言えば「元気」、悪く言えば「うるさい」。
よく言えば「賢い」、悪く言えば「小難しい」。
子どものうちであれば「良くも悪くも」ぐらいで済むことが、大人になると「悪い」が引き立ってしまう傾向があるんですよね・・・。
子どもが人の「ちがい」を認められる大人になったとしても、自分の「ちがい」を認めてもらえない社会はこれからも続くと思います。
集団に悪影響を与えてしまう「ちがい」はみんな注目しますし、自分に不利益な「ちがい」はみんな困ってしまうんです。
結局は人は「長所」より「短所」を見てしまう生き物なんだな…ということを社会に出て20年間ずっと見てきました。
社会に出ると「良くも悪くも」みんなおんなじなんです。
みんなちがうからこそ「みんなおんなじ」人間なんだ!
というわけで、こちら森山直太朗さんの「みんなおんなじ」。
きつつき ばった とむそんがぜる
それぞれみんな おんなじいきもの
みんなちがって みんなおんなじ
みているぼくも どこかおんなじ
こんなふうに歌っています。
この歌が伝えようとしていることは、みんなちがうのが人間であって、みんなおんなじ人間なんだってことですよね。
授業参観で「みんなちがって、みんないい」について考えながら、私のなかではこの歌が流れていました。
広い世界のなかでは、「みんなちがって、みんないい」し、「みんなおんなじ」だという思想であることはとてもステキなことです。
みんなそれぞれにいろんな世界を持っていろんな幸せの価値観を持って生きているわけです。
ところが、小さい世界のなかでは、「みんなちがって、みんないい」とはなりがたいうえに、「みんなおんなじ」というのもどこか閉塞感が生まれてしまうように感じませんか?
ちょっと捉え方が変わってくるはずです。
みんなちがうけど…みんなおんなじ組織の一員
例えば、学校は勉強をすることが目的の集団です。
でも、勉強が好きな子どもと嫌いな子どもでは、学校に行く目的は変わってきますよね。
勉強が好きな子どもにすれば勉強が嫌いな子どもは邪魔に感じるかもしれません。
勉強が嫌いな子どもにすれば勉強が好きな子どもは妬ましく思うかもしれません。
集団のなかではその集団の目的からずれてくる人が現われはじめたとき、「みんなちがって、みんないい」とはなりにくいんです。
それに、「みんなおんなじ」とすれば勉強をすることが目的である学校からは勉強嫌いの子は居場所を失うかもしれません。
社会に目を向けるとどうでしょうか?
私たちは大人になり、多くの人は会社という集団に属します。
会社という集団は組織と言われ、理念という目的を共にした集団です。
例えば、「思いやりのある介護」という理念を掲げた組織があったとします。
そのなかには、お金のために働く者や介護が好きで働く者、たまたま介護の仕事に就いた者、いろんな人材がいます。
「思いやりのある介護」が実践できない人たちもいると思います。
「みんなちがって、みんないい」と言えるんでしょうか?
「みんなおんなじ」とすれば、みんながみんなおんなじその組織の一員だと自覚して「思いやりのある介護」ができるんでしょうか?
人は、何か目的を持った集団である「組織」に属したときには、「みんなちがって、みんないい」とはなりにくいし、「みんなおんなじ」組織の一員なんだで突き進むしかなくなってしまうんです。
そう考えると、「みんなちがって、みんないい」も「みんなおんなじ」も、その詩が持つ意味合いは、学校や組織のなかでは捉え方が変わってくると思うんです。
でも、学校はまだいいと思うんです。
勉強と言っても、将来の目標がそれぞれ違いますから。
もっともっと「個性」を重んじる理念を全面に出して、「みんなちがって、みんないい」「みんなおんなじ」と言えるような環境を作ることは、組織に比べればまだ可能性はあると思います。
問題は、「組織」なんですよね・・・。
「違う」と「同じ」の違いから考える介護現場の組織作り
組織とは、目的をともにした集団なんです。
私たちは、みんな同じ目的を持った組織人ということになります。
「みんなおんなじ」組織で働いてるんやから、みんなとおんなじようにやることやってもらわな困ります!
組織のなかでの「みんなおんなじ」はかなり狭苦しいものになってしまいます。
でも、「みんなちがう」から「みんなおんなじ」にはなりえないんですよね…。
当然のことながら、「みんなちがって、みんないい」とはなかなか言えません。
「みんなおんなじ」働きができなきゃ「みんないい」なんて言えないですもんね。
これを「みんなちがう」強みを生かして、「みんないい」「みんなおんなじ」と言える組織にするには「適材適所」の「役割分担」しかないと思います。
介護の仕事で言えば、ケアマネジャーや生活相談員といった職種と役割分担して仕事をしているわけですが、できれば介護士の役割をもっと細分化したほうがよいと思っています。
例えば、食事介助が得意な職員には、食事介助の勉強させて食事介助のスペシャリストに育てて研修の講師なんかも任せたりしてみるんです。
研修の講師が苦手なら、普段困った時に食事のことを聞いたら応えてくれる人ぐらいにしてもいいと思います。
そんなふうにして排泄介助のスペシャリストや入浴介助のスペシャリストを作ったりします。
その分野の相談役みたいにするのも面白いかもしれません。
他には、片付けが得意な職員には整理整頓の相談をしたり、パソコンが得意ならパソコンで力を発揮してもらえばいいと思います。
そうした役割をなんとなくではなく、仕事にしてしまうということです。
食事スペシャリスト、略して食事SPとか名付けてみてもよいかもしれません。
なんかカッコいいと思えるような役割にしてしまうのも重要だと思います。
そうやって、「みんなちがって、みんないい」と言える環境を作ってしまうんです!
そうすれば、おのずと「みんなおんなじ」組織の一員だと言えるはずです!
これだけでは不十分です。
仕事としてしている以上は、それぞれの役割をしっかりと評価することが必要となってきます。
私たちの評価は結局はお金でよね。
どの役割がどの程度の評価であるべきかを十分に協議したうえで、役割を給与に反映させていく仕組みが必要となります。
一番手っ取り早いのが手当としての支給だと思いますが、できることなら基本給に反映できる仕組みにしたいものですね!
人事考課となると、「誰が適正な評価ができるのか!」などと揉める施設が多いようです(^_^;)
ならば、職員に与える役割の評価設定を決めて、与えられた役割の評価設定に基づいて給与に反映させていく仕組みのほうが職員の理解が得られやすいはずです。
介護職員処遇改善加算や介護職員特定処遇改善加算で得た収入をこうした役割評価をもとに支給するなどすれば、理想的だろうなと思います。
「みんなちがう」なら、その「ちがう」部分を給与も含めてはっきりさせてしまったほうがいいんです。
何をどう頑張ればどれだけ給与が上がるのかが見えている組織はとても健全です。
そして、給与が上がる道はたくさんあったほうが頑張れる!
介護は意外と多様な道が作りやすいと思うんですけどね…。
実際はなかなか難しいようです(^_^;)
なぜそうした仕組み作りが進まないかと言うと、まだまだ介護業界の思考が遅れているということと、仕組み作りが得意な人材が介護業界に少ないということだと思います。
介護施設の仕組み作りなんかは、介護現場の経験がある人じゃないと難しいと思いますし、介護士にそうしたスキルの持ち主がなかなかいないんですよね…。
介護士は、介護施設経営のあり方を人材育成の面からもっと勉強しておいたほうがいいと思います!
きっと将来的には評価されるはずですから!
「みんなちがって、みんないい」と言える組織作り!
気持ちよく「みんなおんなじ」と言える組織作り!
皆様の施設でも考えてみるところから始めてはいかがでしょうか?
まとめ
「みんなちがって、みんないい」は現実はなかなか難しいものです。
ですが、難しいとばかり言って立ち止まっていていはいけません!
なぜなら、介護現場の人材確保はますます厳しくなるからです。
人材がいないんですもん…(-_-;)
介護は多様な力が求められる仕事ですが、そんな力を持った介護士など一握り…。
能力の偏った介護士は今後増えていくことが予測されます。
少ない人員のなかで、どうやって介護施設を経営していくのか?
そのヒントは「みんなちがって、みんないい」の言葉にあると感じています。
そして、「組織」である以上求められる「みんなおんなじ」組織の一員だと思える風土をどうやって作れるのかというところも大切です。
この記事のように、「違う」と「同じ」の相反する言葉を意識しながら人材育成に取り組めば道は開けるはずです!
記事のなかで使った相反する言葉たちは、意外といつも隣り合わせです。
「良い」と「悪い」
「長所」と「短所」
「好き」と「嫌い」
「得意」と「苦手」
いろんな介護士が助け合って仕事が出来る組織作りをしていくしかないということですね。
ちなみに、この「違う」と「同じ」を考えることは、対利用者で考えたときにも同じようなことが見えてきます。
一度、「違う」と「同じ」について、いろんな側面で考えてみると面白いですよ!