どうも、YO-PRINCEです。
こちらのツイートの解説記事のパート2です↓
認知症のBPSD
— ヨウ-P@介護福祉士×ブログ漫才師 (@s_y_prince) 2019年10月21日
看護師の医師への伝え方で薬が変わる
介護士の看護師への伝え方次第で医師への伝わり方が変わる
要は介護士次第で薬は変えられる#介護にまつわる小さな引き出し
※BPSD=認知症の行動・心理症状。徘徊や暴力といった認知症の周辺症状のこと。
パート1がこちらの記事です↓
前回記事では、「医療モデル」と「生活モデル」の違いを整理しながら、介護の専門性について書きました。
認知症ケアにおいて、看護師や医師の役割である医療的アプローチはもちろん必要ですが、医療的アプローチにも介護士の役割があります。
冒頭ツイートのとおり、認知症のBPSDに向精神薬が使われることはよくあることですが、その薬が安易に増やされたり、より強い薬に変えられたり、過度の服薬にならないようにしたいものですよね。
そのためには、利用者に一番よく関わり、利用者のことを一番よく知っているだろう介護士が鍵を握ることになります。
向精神薬が処方されるかどうかは、介護士の報告から全てが始まります。
今回の記事では、介護士の報告の前後で起きていることを見つめ直し、向精神薬を必要以上に増やさないために介護士が認知症ケアにおいてできることを書いていきたいと思います。
- 介護士が認知症のBPSDについて報告した結果…
- 薬が増える理由は『医療モデルの影響』と『クセがスゴい!』
- 介護士が持つべき観察スキルと報告スキル
- 認知症のBPSDを和らげるケアで減薬チャレンジ!
- まとめ
介護士が認知症のBPSDについて報告した結果…
認知症のBPSDが出現したとき、介護士はその状況を看護師に報告します。
医療的アプローチが必要かどうかを判断するためにも看護師との情報共有は必要不可欠です。
例を上げて考えてみましょう!
例えば、介護士はこんなふうに看護師に報告します。
Aさんなんですけど、最近介護抵抗が強くてすぐに叩くんですよ。認知症が進んでるんですかねー。
認知症進んどるかもしれんなー。先生に言うとくわ。
そして、看護師は医師に報告をします。
Aさんなんですけど、最近介護抵抗が増えて暴力が増えているみたいなんです。どうしましょうか?
薬増やそか?
介護士が「すぐ叩く」と報告したのに対して、看護師は「暴力が増えた」と報告しています。
このように、報告のニュアンスが少し変わっていく「伝言ゲーム」的なことが起こります。
看護師の主観が入ってしまうということもあるかもしれません。
こうして、いとも簡単に薬が増えてしまうのです。
そして1週間後、介護士は再び報告します。
Aさん、それほど変わらないですね。介護抵抗はありますし叩いてきますねー。
そうかぁ。先生に言うとくわ。
実は、この介護士さんはAさんとの相性が悪く、もともとよくAさんを怒らせていたのです・・・。
さて、この後どうなるんでしょうか??
先生、Aさんの症状変わらないみたいですねー。ただ、相性の悪い介護士に対してだけ暴力がひどいみたいなんです。どうしましょうか?
暴力があるんやったら一緒やで。薬もう1錠増やそか。
せっかく看護師はAさんと介護士の相性の悪さに気づいていたにも関わらず、医師には全く届いていません…。
医師の言われる通り、特定の職員に対してだけの暴力でも暴力があるなら一緒なのでしょうか??
こんなふうにして、介護士の報告から向精神薬がどんどん増えていくことになるわけです。
薬に頼るまえにできることがまだあるような気がしてなりませんよね・・・。
薬が増える理由は『医療モデルの影響』と『クセがスゴい!』
前述の報告の一例を見ていると、看護師が主観も交えて医師に報告してしまったり、医師が簡単に薬を増やしていることが問題と捉えることもできます。
では、認知症のBPSDに対して安易に薬が増えてしまう理由を「医療モデル」と「生活モデル」で考えてみましょう。
医療モデルに偏ってはいけない認知症の医療的アプローチ
看護師も医者もですが、思考のベースは「医療モデル」です。
なので、悪いところがあれば治してしまおうという考え方に陥りがちです。
暴力があれば薬で抑えてしまおう…となってしまうことは多いです。
認知症のBPSDは、人的環境・物的環境の環境因子の影響を受けて現れる認知症の周辺症状です。
なので、環境を見直せばBPSDを減らすことは可能と言えます。
そんなことは分かっていながらも「薬」のほうへと向かってしまいがちなのは、やはり「医療モデル」の思考がベースにあり、それこそが医師や看護師の役割でもあるからです。
介護士は、医療につなげるということは医師の判断にゆだねるということだという意識を持っておいた方がよいと思います。
医師の指示はそう簡単に覆りません。
これは在宅介護に当たられるご家族の立場でも言えることだと思うので、受診される場合は医療的アプローチが色濃くなることはある程度覚悟しておかれた方がよいと思います。
もちろん、そんな医師・看護師ばかりではなく、「生活モデル」の思考を兼ね備えた医師・看護師もおられます。
在宅介護の場合だと、認知症専門医等の認知症に強い医師を探せば、より適切な服薬治療を受けられるかもしれません。
日本認知症学会のホームページで全国の認知症専門医の紹介ページがあるでぜひ参考にしてみてください↓
「医療モデル」に偏った認知症ケアは危険です。
前回記事で理学療法士や作業療法士等のリハビリ専門職が「医療モデル」から「生活モデル」にシフトしていく時代になっていることに触れましたが、医師や看護師もまた「生活モデル」の思考が求められる時代になっているのは間違いないと思います。
というわけで、認知症の方に向精神薬が増える理由の一つに「医療モデルの影響」をあげさせていただきました。
千鳥のノブが介護現場で医師に言いそうな言葉は「クセがスゴイ!」
では、見出しにあるもう一つの「クセがスゴイ!!」とは・・・??
「クセがスゴイ!!」とが漫才コンビ・千鳥ノブの定番のツッコミです。
おそらく、千鳥のノブが介護現場から医師を見た時にこのツッコミが絶えないんじゃなかろうかと…。
ケアマネジャー向けのとある講演会で講師の方が言われていました↓
医師に分かってもらおうなんて思っちゃダメですよ!
なかなか医者に「生活モデル」の言い分が分かってもらえなくて薬が増えちゃうことがあるのです…。
もちろんそんな医師ばかりではないので誤解のないようにお願いしますm(__)m
まぁ、「クセがスゴイ!」は介護士や看護師にも当てはまることは多いかもしれませんね(^_^;)
介護士が持つべき観察スキルと報告スキル
認知症のBPSDへの対応を「生活モデル」で捉えるとどうなるんでしょう?
「環境」を業務対象としている「生活モデル」なら、BPSDの原因となっている環境因子を探ることは必然となります。
過剰な医療的アプローチにつながらないように介護士が持つべきスキルには、「観察スキル」と「報告スキル」にあります。
観察スキル
では、「観察スキル」から見ていきたいと思います。
認知症のBPSDの環境因子ってどんなものがあるんでしょう??
人的環境:関わる全ての人、介助方法、声、表情、相性、感情…etc.
物的環境:光、音、広さ、狭さ、家具、福祉用具、使いやすさ、見えやすさ…etc.
ここに挙げたのは一例ですが、こういった環境が認知症のBPSDにつながるわけです。
人的環境で言えば、介助が荒い、声が大きい、表情が険しい…といったようなことが、認知症の方に不快感を与えBPSDにつながることがあります。
物的環境で言えば、太陽の光がまぶしい、テレビの音がうるさい、広すぎて不安…といったようなことが、認知症の方に不快感を与えBPSDにつながることがあります。
介護士は、利用者の一番身近で一番関わる人なので、こうしたことをしっかりと観察する必要があります。
この観察スキルを上げるにはこんな方法もあります↓
認知症の利用者さんが不穏になられる理由は、利用者さんがいるその場所で過ごしてみると分かることがある
— ヨウ-P@介護福祉士×ブログ漫才師 (@s_y_prince) 2019年6月28日
まぶしかったり
エアコンの風がよく当たったり
人の動きが見えすぎる場所だったり
その人が落ち着ける環境を考えるには、そこで過ごしてみて考えてみよう💡#介護にまつわる小さな引き出し
これはぜひやってみてください!
おススメです!
とにもかくにも介護士に求められるのはまずは日々の観察であり、認知症のBPSDにつながりうる環境をしっかりと観察し、その環境の改善に取り組み続けることが必要となってきます。
報告スキル
日々の観察が十分にできたら、次に看護師への報告をします。
「事実」を伝えることは言うまでもないことですが、ここでの「報告スキル」は極端な例として「クセがスゴイ」医師や看護師を相手に報告する場合として書いていきたいと思います(^_^;)
まず医師であれ看護師であれ、相手の「クセ」を知ることが大切です。
「こういう報告の仕方にはイライラしやすい」とか「このタイミングで言うのは聞いてもらえない」とかそういったことです。
Aさんの薬なんですけど合ってないように思うんですけどね・・・。
それはアンタが決めることやないで!
すみません、Aさんのことなんですけど・・・
ちょっと!今言わんといてくれる?
介護士の皆さん、そんな経験はありませんか?
これだけ見ると、医師や看護師の「クセ」がすごそうに見えるわけですが、実はそうなるのも仕方ないことだったりするのです。
ざっと医療職への報告に当たっての相手が医療職ゆえの注意点を以下にまとめておきます↓
- 医療的なことでの提案は医療職の職域なので腹が立っても当然です。介護のことを知らない人に知ったような口を利かれると腹が立つのと一緒ですね。
- 医療職の方は服薬のセットをしている時や新規の受け入れの時等は忙しくされていることが多いです。医療事故は介護事故以上にリスクが高く、薬のことや医療的処置のことなどはかなり集中して業務に当たられていることがあるので、報告等する場合はタイミングを配慮したほうがよいでしょう。
- 医療職の方は仕事柄ダラダラした報告を嫌います。簡潔にまとめての報告を心がけましょう。
全ての医療職の方が当てはまるわけではないと思いますが、この3点だけでも心がけておくと医療職の方との連携はスムーズかつ良好になると思います。
介護士が直接話す医療職はほとんどが看護師だと思うので、日頃からの連携で上記の3点を心がけておくと本当に大切な報告をする場合に役立つと思います。
ちょっと余談ですが、介護士と看護師の関係は、介護施設ではなかなかうまくいかないことが多いんですよね(^_^;)
私がその事業所の長として介護現場でしてきたことは、この介護士と看護師の関係への働きかけを大切にしました。
介護施設での職員の主役は介護士であり、看護師には介護士をサポートする立場に立ってもらうように働きかけていました。
とはいえ、看護師も思考をすぐに変えられなかったりしますし、介護士にも看護師の理解をしてもらう必要があるので、介護士にも同じように働きかけていました。
今回の記事は介護士向けですので、介護士に看護師の理解を求める内容の記事にしていますが、より関係性をスムーズにするには看護師への働きかけも必要と思っているので、また看護師に求めたいことについても記事にしたいなぁと思います。
さて、話を戻しますが、看護師への報告をスムーズに行えるようになったら、次は医師にどうやって報告をしていくかですね。
看護師は医師の「クセ」を知ったうえで報告することは経験上心得ておられると思います。
その前提で書きますが、介護士と看護師がタッグを組んでどうやって医師に報告するかを相談しながら進めることができたら理想ですね。
そこに生活相談員やケアマネジャーも入ればとても理想的です。
認知症の利用者に、介護現場としてどの程度薬の力が必要なのかを十分に話し合っておくとよいと思います。
できれば、介護の力で何とかできないかを十分に協議したうえで、どの程度薬の力を借りたいかを明確にしておくんです。
医療的アプローチにつなげる報告は、認知症ケアにおいては適切な向精神薬の処方がゴールです。
どの程度まで落ち着いてもらうことがゴールなのか、しっかりとチームでゴール設定しておくことを心がけましょう!
認知症のBPSDを和らげるケアで減薬チャレンジ!
さて、医療的アプローチにつなげるために介護士が出来ることが何となく見えてきたと思います。
あとは、出来る限り介護の力で何とかできないかを頑張ってみることです。
そうすれば、向精神薬は減薬できるはずです!
認知症ケアについてはこれまでも記事にしているのでこれらを参考にしてみてもらえたらと思います。
まとめ
認知症のBPSDには医療的アプローチは必要ではあります。
ただし、過度の投薬にならないように気を付けなければなりません。
どの程度医療的アプローチが必要かは、介護士が介護の力でどこまでできるかにかかっています!
なので、介護士は認知症ケアのスキルが必要不可欠なのです!
そこには知識と経験が必要です。
バリデーションやユマニチュードができればいい??
そんな簡単なものではありません。
認知症についてしっかり学ぶこと、個々の利用者についてしっかりと知ること、介護はどうあるべきかをしっかり考えること、環境について考えること、技術を磨くこと。
それらをし続けることが大切です。
そのうえで、利用者の生活を一番よく知っている介護士が医療的アプローチへの扉を開けるわけです。
これ以上は介護の力では限界かなと思った時や、利用者さんのためにも医療の力が必要だと感じた時などにその扉を開けるんです。
それは、介護士が看護師へ報告するところから始めるわけですが、出来る限り医師に的確に現状が伝わるようにできうることはしておきたいですよね。
医師のことはあまり触れてませんでしたが、医師は全利用者、全患者のことが頭の中にあるわけではありません。
医師に相談したときは「この人薬何飲んでたっけ?」と言われるようなことだってあります(^_^;)
医師は多くの患者を限られた時間で診断し、薬を処方するわけですから、そういうことを踏まえると、報告の仕方がいかに大事かが見えてきますよね。
介護士⇒看護師⇒医師の報告ができるだけいい形でつながるように、ぜひこの記事に書かれたことを参考にしてみてください。
認知症のBPSDだけでなく、排便コントロール等にも使えると思います!!
医師は「クセがスゴイ!」と割り切って、千鳥のノブぐらいのツッコミをいれてあきれてみせながら、医師と向き合っていけるように医療連携をしてみると、意外とうまくいくかもしれませんよ!