どうも、YO-PRINCEです。
ツイッター界隈の介護士の中で話題のクローズアップ現代+。
以前のこちらの放送がSNSで大炎上したということで・・・。
ちなみに現実の私の身の回りでは話題にもあがってきませんが・・・(^_^;)
10/16の放送分では9/11放送分に対しての批判を受けて「徹底討論!それでも必要?一般病院の“身体拘束”」というテーマで放送されました。
身体拘束の問題は奥深いです…。
クローズアップ現代+で取り上げられたのは医療現場についてですが、介護現場でも同じような実態が存在します。
というわけで、今回の記事は介護現場での「身体拘束」についてです。
介護施設が身体拘束廃止に取り組んできたこの20年間を私の実体験をもとに振り返りたいと思います。
お伝えしたいことは、身体拘束廃止の取り組み方と現実、そしてこの20年間進展がないという驚き・・・です(^_^;)
- 身体拘束廃止の取り組みは平成12年に始まった!
- 身体拘束は意外になくせるケースが多い!?
- 『身体拘束をゼロにしてみよう!』でやってみる取り組みを!
- 身体拘束ゼロにするときに忘れちゃいけない『生活しよう!』
- まとめ
身体拘束廃止の取り組みは平成12年に始まった!
平成12年4月、介護保険制度開始とともに、介護保険施設指定基準に身体拘束禁止規定が盛り込まれました。
当時の介護現場では、少なくとも私の身の回りでは疑問が湧きあがっていました。
そんなん無理に決まってるやん!
一方で、身体拘束廃止に燃える職員もいました。
今で言うところのキラキラ系介護士にあたるのでしょうか?
拘束はそりゃあかんに決まってるやん!禁止なんやから全部拘束なくさんと!
私の当時いた施設は、例外なく身体拘束をすべて無くす方向で一気に動きました(+o+)
身体拘束禁止という言葉が誤解を生み、身体拘束は絶対にいけないという空気ができあがっていましたので…。
本当は当時から「身体拘束ゼロを目指す」という主旨のもので、「ゼロにする」というものではなかったのです…。
身体拘束廃止は、「原則禁止なんだけど、以下の3原則を満たしている場合は身体拘束してもかまわない」というもので、その3原則は今も昔も変わっていません。
- 切迫性
- 非代替性
- 一時性
身体拘束廃止の取り組みが各施設で始まった平成12年、まだまだこの3原則が周知されていませんでした。
当時の私の施設では一気に身体拘束ゼロになったわけですが、この3原則に該当するケースは今思えば多かったと思います。
そもそも、それまで身体拘束を当たり前にしていた施設に代替できるケアがすぐに出てくるわけないですから・・・。
工夫の引き出しにも限りがあり、「非代替性」は該当している状況であったと思います。
いったんは拘束のままにして代替できるケアをしっかりと考えるということでよかったのでは…と今ならそんなふうに思います。
当時の私たちは、センサーマットなどなくベッドの高さを変える機能もないなかで、4点柵はすべて止めて、ベッド横に落ちても大丈夫なように大きなマットを敷いて、大きな事故なく乗り切っていました(-_-;)
奇跡ですよね・・・(^_^;)
そんなふうにして身体拘束廃止の取り組みが今から約20年前に始まったわけです。
もちろん、これは私の施設の話で、当時はすぐに拘束がなくならない施設も多々ありました。
介護用つなぎ服は当たり前、車イスの抑制帯は当たり前・・・。
そんな施設が普通に存在していた時代なのです・・・。
身体拘束は意外になくせるケースが多い!?
いきなり身体拘束をゼロにして、事故なく対応できたという経験を経て思ったことは、意外と身体拘束しなくてもよいケースは多いということでした。
なんならセンサーマットも低床ベッドも施設にはなかった時代です。
それでも身体拘束をゼロにして、かつ大きな事故もなく過ごしてもらえたのです。
軽度者が多かったわけではありません。
認知症重度の方が最終的に行き場なく入所するような老健での出来事でした。
50床で夜勤は二人体制でした。
さて、どんな対策をしたのでしょう??
例えばこんなことです↓
排泄パターンの把握に努めて、その方の合った時間にトイレ誘導又はオムツ交換!
コールを押してもらえるような工夫をしてコールが押せるようになってもらう!
どの言葉なら読めるか?どの言葉なら響くか?どこに書いた紙を置けばよいか?
とにかく未然に事故を防ぐ対策をできることはどんどんやりました。
様々な工夫の結果、身体拘束がなくなるだけでなくケアの質も上がるのです!
ケアの工夫が成功すると、どんどん工夫の引き出しは増えていくものです!
そんな経験のなか学んだことは、身体拘束廃止の取り組みはゼロを目的にするのではなく、まずはゼロを目指して取り組むべきだということでした。
では、身体拘束を一気にゼロにしてしまうのはどうなんでしょう?
当時、身体拘束廃止のなかでこんなこともやりました↓
ベッド柵は片側は1本だけで落ちても大丈夫なようにベッド横に厚めのマット…。
それでも転落リスクの高い人は詰所横にベッドを持って来て寝てもらう…。
立ち上がりの多い人は、詰所の前で陣取ってもらう…。
身体拘束をゼロにするために、知らず知らずに落ちて床で寝ていたり、部屋では寝れなくなったり、いつもいた席にいる時間は減っていきました・・・。
こんなケースもありました↓
昔々、点滴で針抜いてしまうから手を縛られてたおばあさんが身体拘束だからといって縛られなくなりました。
— ヨウ-P@介護福祉士×ブログ漫才師 (@s_y_prince) 2019年10月9日
点滴中やっぱり針を抜こうとしてしまうので職員さんに両手を押さえつけられていました。
この施設は拘束ゼロですと言っていたそうな。。。
これでいいんでしょうか???
そんななかで感じたことは、身体拘束ゼロのなかで生まれる疑問にこそ目を向けなければいけないんじゃないかということでした。
『身体拘束をゼロにしてみよう!』でやってみる取り組みを!
身体拘束をゼロにすれば当然のことながらマンパワーが必要になります。
どの施設も限られた人員のなかで介護するので環境の力を使うことになるわけですが、工夫にも限界があることから上記のような不適切な環境の使い方をせざるを得なくなってしまいます。
多床室のある従来型の施設で当たり前にしてしまっていたような『詰所横で寝てもらう』という行為は不適切だろうとは思います。
ですが、リスクのある人の目が離れた部屋で寝てもらって『ある程度のリスクは仕方ない』としてしまうより“優しさ”のある対応だと私は感じてしまいます。
そこで悩んでしまっては真の身体拘束ゼロなんてできないんだと思うんですが、そこは悩んだり考えたりできる余白を残しておくほうが工夫が生まれるというのが私の考えです。
なので、『身体拘束ゼロにします!』は止めておいたほうがいいと思っています。
そもそも、身体拘束は『非代替性・一時性・切迫性』の3条件を満たし緊急性が高い場合にはしてもよいことになっているわけですし、本来『ゼロを目指す』という性質のものです。
私としては『身体拘束をゼロにしてみよう!』で取り組むのがベターだと思っています( ・`д・´)
『やってみよう!』というのは一番モチベーションを高めやすく維持しやすい取り組み方だと思います。
やってみてダメならまた考えりゃいい!
そのぐらいの気楽さが身体拘束廃止には必要だと思うのです!
身体拘束ゼロにするときに忘れちゃいけない『生活しよう!』
そして、忘れてはいけないのが『生活』の視点です。
詰所の前でなんて普通寝ないでしょ?
人に見られてる環境で座ってたくないでしょ?
施設での生活にも『普通』の感覚は大切です。
そんなこと言われたらなんもできないすよ!
…そんな声が聞こえてきそうですが、そこを考えないと工夫のない単純な仕事と化してしまいます。
単純で、かつ大変な仕事にするか…?
それとも、いろいろあれやこれややってみてうまくいく体験もしながら大変な仕事にするのか…?
私は後者を選びます。
私が介護をしていて好きな言葉があります。
普通に生活してもらったらええやん!
普通に生活するのが介護の本質です。
普通に生活してもらうことが常にベースにあるべきです。
普通ってなんやねんって考えるんです。
もちろん人によって普通は異なるので一律に捉えてはいけないと思います。
だから、介護士は利用者の発された言葉や表情や行動のなかで利用者の『思い』を読み取っていくわけで、そこにこそ介護の専門性があると感じています。
介護が必要になった状況の人たち、また介護が必要になったにも関わらずその必要性を感じていないような状況の人たちの『思い』を読み取ることはとても難しいことですよね。
利用者それぞれに『思い』があっての『生活』です。
ホントは、それぞれの普通の『生活』をしてほしいですよね!
つまり、一言で言うと「生活しよう!」ってことです。
なので、身体拘束廃止に取り組むときのキャッチフレーズとして私はこれを提案します↓
身体拘束をゼロにしてみよう!もちろん、生活しよう!
まとめ
身体拘束廃止の取り組みの現状は、施設によってばらつきがあることと思いますが、どんな施設も矛盾は生じていると思います。
身体拘束することによって得られる安全性。
身体拘束しないことによって得られる生活するということ。
この二つの間で葛藤があって当然のことだと思います。
どちらも達成できることもあると思いますが、そんなうまくいくケースばかりではありませんもんね…。
以前こんなツイートをしました↓
身体拘束しないという方針を施設としてしっかりと打ち出すと、どうしてもリスクの高い利用者がその施設を敬遠するケースが出てきます。
— ヨウ-P@介護福祉士×ブログ漫才師 (@s_y_prince) 2019年10月17日
それがいいことかどうなのか…
ずっと答えが出せずにいます…
拘束なんてしたくないし、困っている方を見捨てたくもない
もちろん職員に辛い思いもさせたくない
悩み多き身体拘束・・・。
残念ながら、20年前に介護保険制度開始とともに身体拘束廃止の取り組みが始まり理想論のままで止まっている気がしてなりません。
この20年間、もっともっと議論すべきテーマであったと思います。
未だに「身体拘束止めるべき」と「安全を守るべき」の思考はすれ違いのままで、10/16の放送分のクローズアップ現代+を見ていても、二つの思考の溝を感じとれました。
その溝は多くの介護施設にある溝だと思います。
その溝を埋めるために必要なのはやはりこの言葉しかありません!
身体拘束をゼロにしてみよう!もちろん、生活しよう!
ホントに難しいケースは、三原則に基づいて一時的に拘束はしておいて、30分だけでも1時間だけでも…と身体拘束ゼロをやってみればいいと思います。
やってみたら意外と何とかなるケースもありますし、そのなかで工夫が生まれることもありますから。
そして、不適切な生活になっていないかを常にチェックします。
理想も現実もすべて受け入れて少しずつでいいからやってみましょう!
それでも身体拘束しかなければ、三原則に基づいてそうするしかないんです。
なるべくそうならないために、やってみて想像力と創造力を育てておけば、なんとかできる方法は増えていくはずです!
引き出しを増やしましょう!
こちらが私の引き出し集です↓何かヒントがあるかも…。
「やってみる」についてはこちらの記事もご覧になってください↓