どうも、DoctorのDNAは全くないYO-PRINCEです。
『介護のA to Z』シリーズです。
今回は介護の『D』で、Dementia(認知症)です。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達する2025年問題。
この2025年には認知症高齢者が最大730万人まで膨れ上がると厚生労働省が発表しています。
「認知症700万人時代」と言われていますが、ここには認知症予備軍と言われている「軽度認知障害(MCI)」は含まれておらず、その数を含めば1000万人を優に超えることになります。
介護人材が減っていく中でのこの数字が示す未来は・・・。
「認知症」について、介護現場からできることについてまとめておきたいと思います。
- 「認知症」は病名ではない
- 【医療的アプローチ1】「認知症」を引き起こす病気の診断を受ける
- 【医療的アプローチ2】治療できる認知症がある
- 【医療的アプローチ3】向精神薬は使用すべき?
- 【介護的アプローチ】想像力と創造力のケアで限界突破!
- まとめ
「認知症」は病名ではない
当たり前のようにして「認知症」という言葉を使っていますが、基本的なことさえ知られていないということがあります。
その一つが「認知症は病名ではない」ということ。
認知症とは特有の症状を示す状態を総称する言葉です。
認知症を引き起こす病気の代表的なものが「アルツハイマー病」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症(ピック病)」ということです。
「認知症」を引き起こしている病気が何なのかということが分かるとどうなりますか?
その病気の特徴を知ろうとします。
そして、その特徴に合った対処法を知ろうとします。
そうすると、まずは「介護」の仕方が変わってくるというわけです。
・・・というわけで、病気を特定することから始めましょう!
【医療的アプローチ1】「認知症」を引き起こす病気の診断を受ける
認知症の方の家族が「認知症」かどうかを調べるために受診した結果・・・
「認知症と言われました・・・。」
・・・なんてことがあります。
前述のとおり、認知症は病名ではありません。
「認知症」を引き起こす病気が何かを診断してもらう必要があります。
私が居宅ケアマネをしている頃に担当している利用者さんが、「ビンスワンガー病」との診断を受けたことがあります。
その利用者さんはかかりつけ医には「認知症」とは言われていたのですが、「どうせならちゃんと診断を受けたほうがいいですよ。治る認知症の場合もありますし・・・。」とお伝えし、「認知症」に強い医師を紹介させていただいたのです。
この時私は、「認知症」の診断は大切だなと痛感したのです。
まずはかかりつけ医に相談するとよいと思いますが、「認知症」の診断については「認知症専門医」のいる医療機関を受診するとよいと言われています。
認知症を引き起こしている病気が分かれば、もしかしたら治る可能性もあるかもしれないので、認知症の診断についてどの医療機関にかかるかはとても重要だと思っています。
こちらから全国の認知症専門医を調べることができます↓
ちなみに「ビンスワンガー病」の診断を受けた医師は「認知症専門医」ではありませんでした。
必ずしも「認知症専門医」にかかる必要もないと思います。
担当ケアマネジャーやかかりつけ医に相談する等して、「認知症」に強い医師を紹介してもらいましょう!
ちなみに「ビンスワンガー病」とは、血管性認知症の一種で、慢性の高血圧患者にみられる進行性の「認知症」とのことでした。
【医療的アプローチ2】治療できる認知症がある
「認知症」の多くは現在の医療では治せないと言われているため、「治らない」という情報だけがインプットされている人が多いようです。
「認知症」を引き起こす病気が治療可能であれば治るということこそ、インプットしておいてください。
だからこそ、「認知症」を引き起こす病気をちゃんと診断してもらう必要があるのです。
治療可能な認知症の例をあげると、正常圧水頭症、てんかん、低ナトリウム血症、アルコール性認知症などがあります。
なかでも出会う頻度の高い正常圧水頭症について少し説明しておきます。
正常圧水頭症とは、脳室内に脳脊髄液が溜まることにより脳室が拡大し、脳が圧迫され萎縮する病気です。
この病気は、髄液シャント術という手術にて症状を改善することが可能で、治る認知症と言えます。
「治療可能」とはいえ、すべてが「治る」というものではありません。
治る可能性のあるものから、進行を止めるにとどまるものもあります。
いずれにせよ、適切な治療を受ければ「回復」を期待できると捉えていただいて、まずは「認知症」を引き起こす病気の特定にこだわられることをおススメします。
【医療的アプローチ3】向精神薬は使用すべき?
認知症の症状は二つに分かれます。
認知症になると脳の細胞が死んで現れる中核症状と、その人の性格や素質、その人を取り巻く環境や心理状態の影響を受けて現れる周辺症状です。
この周辺症状とは、認知症の行動・心理症状と言われBPSDと言われています。
この二つの症状に向精神薬が使われることがあります。
向精神薬には、認知症治療薬と抗鬱剤・抗精神病薬などがあります。
「中核症状」には認知症治療薬を検討
認知症になったら現れる「中核症状」の進行を遅らせるための認知症治療薬。
アルツハイマー型認知症を中心とし、今では数種類の治療薬が使われていますので、医師に相談してみるとよいと思います。
もっとも有名なのが、最初に認可された「抗認知症薬」アリセプト(一般名:ドネペジル塩酸塩)。
今では後発薬(ジェネリック)も使用可能となっています。
アリセプトは、軽度から重度のアルツハイマー型認知症に加えてレビー小体型認知症にも使用できます。
他には軽度からの中度のアルツハイマー型認知症に使われるレミニール(一般名:ガランタミン)や中度から重度のアルツハイマー型認知症に使われるメマリー(一般名:メマンチン)などがあります。
リバスタッチパッチ(一般名:リバスチグミン)という貼り薬もあり、軽度から中度のアルツハイマー型認知症に使われます。
これらの薬は、例えばアリセプトは意欲低下等の症状に、レミニールは興奮しやすい等の症状に効果が出やすいといった特徴があり、BPSDに応じて処方されることもあるようです。
認知症の進行を遅らせることができるのであれば積極的に使いたいところですが、BPSDの現れ方によっては使用が難しいこともあることに留意してください。
「BPSD」には抗鬱剤・抗精神病薬が最後の砦・・・
気分の落ち込み、暴力、興奮、徘徊、物盗られ妄想、幻視、幻聴・・・。
「BPSD」には、抗鬱剤や抗精神病薬が使われることが多くあります。
他者に危害を加えるような症状には薬の使用もやむを得ないかもしれませんが、できることなら使うのは避けたいところです。
それは、副作用の怖さです。
薬の量を間違えればふらつき等の副作用により転倒⇒骨折…といった例が多く見られます。
1日のほとんどをウトウトしたような状態で過ごされる方もおられます。
抗精神病薬が使われる認知症の利用者さんの介護を数多く経験してきたなかで、私としては正直なところ「怖さ」が先立ってしまいます。
とはいえ、抗精神病薬が必ずしも怖いわけではなく、逆に薬がうまく合う利用者もおられます。
20年以上の介護のなかでの経験で言えば、「賭け」のようなもの・・・というのが実感です。
なので、抗鬱剤や抗精神病薬を使え前に、まずは「介護」の力で何とかしたいと考えたいものです。
【介護的アプローチ】想像力と創造力のケアで限界突破!
ここまでは【医療的アプローチ】について書いてきましたが、ここからがこの記事の本題です。
とはいえ、【介護的アプローチ】についてはこのブログで数多く記事を書いてきたので今回この記事で特別書くようなこともありません(^_^;)
一言で言えば、「工夫」です。
必要なのは「想像力」と「創造力」です。
認知症の方の「思い」を想像し、どんな「世界」におられるのかを想像し、どんな「環境」をつくればいいのかを創造し、どんな対応をすればいいのかを創造するのです。
突拍子もないようなアイデアが認知症の方を救うことが多々あります。
ある一面だけを捉えて「この人はこんな人だ」と決めつけてしまったら介護はそこまでです。
まずは認知症ケアに必要な「想像力」から養ってみましょう!
とはいえ、認知症ケアは困難事例も多いものなので、介護する自分自身が精神的に追い込まれることも多々あります。
そんなときには、ゲーム感覚でケアを考えることで困難を打ち破ることができることがあります。
「介護」の力は時として「魔法」です。
めちゃくちゃ興奮していた利用者さんが「介護」の力ですんなり落ち着くなんてことは多くあります。
そして、それはたまたまではなく利用者さんの思いに沿った根拠ある「介護」であることも多くあります。
たまたまであっても根拠を見出すことができたりもします。
できることならまずは「介護」でアプローチしたいものですし、そこに「介護の専門性」があるんだと思います。
まとめ
以上、介護の「D」、Dementia(認知症)でした。
認知症ケアは「医療的アプローチ」と「介護的アプローチ」の双方で考えていく必要があります。
大切なのは、パーソンセンタードケアの考え方です。
パーソン・センタード・ケアとは、認知症をもつ人を一人の「人」として尊重し、その人の立場に立って考え、ケアを行おうとする認知症ケアの一つの考え方です。この考え方は、自然科学や神学を修めた後に老年心理学教授となったトムキットウッドが、1980年代末の英国で提唱したものです。
※以下サイトより抜粋
認知症の人ではなく、認知症の人なのです。
そこには「介護的アプローチ」の力は欠かせないわけです!
「介護」の力で認知症の人の生活が変わるような研究を今後も実践の中でしてきたいと思いますし、また新たな工夫があれば記事にしてきたいと思います。
では、次回は介護の「E」、Entertainer(エンターテイナー)で介護のこだわりを記事にしたいと思います。